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インタビュー【山崎隆氏】(1)
資産価値の落ちないマンションを選ぶ究極のセオリー/その1 マンションは都市文明を買え!
都心部の地価バブル再燃と暴落論が相半ばする一方で、アメリカのサブプライムローン問題を発端にした世界的な金融不安が蔓延し、激動の時代の幕開けを迎える2008年。多難な船出となりそうな予感のなか、どう行動すればいいのでしょうか。気鋭の不動産コンサルタントで、近著の『東京のどこに住むのが幸せか』では業界に波紋を呼び起こした山崎隆氏に、マンション選びの指針と資産価値を見定める究極のセオリーについて伺いました。
山崎氏
山崎隆氏著書『東京のどこに住むのが幸せか』(講談社)
山崎隆氏
不動産コンサルタント
【プロフィール】
1960年東京生まれ。学習院大学経済学部卒。大手住宅メーカー、不動産コンサルティング会社などを経て、96年に不動産と相続のソリューション企業、財営コンサルティング(株)を設立、同社代表取締役。一般消費者向けから法人向けサービスまで幅広く対応。一級FP技能士(厚生労働省認定)、CFP(R)(NPO法人日本FP協会認定)。著書に『遺言書は書いてはいけない』『不動産でハッピーリッチになる方法』(いずれもダイヤモンド社)、『東京のどこに住むのが幸せか』(講談社)など多数。
財営コンサルティング公式HP:http://www.zaicon.co.jp/
情報提供日/2008年1月16日
「少子化で地価下落」はナンセンス

--ミニバブルの再燃といわれた都心の地価も、昨年あたりから頭打ちになり、再び暴落するとか、少子高齢化の進展で、長期的に不動産価格は下がり続けるという指摘が出ています。今後どうなるのでしょうか。

山崎氏 東京都心部の優良住宅地の資産価値が下がることは少なくとも考えられません。不動産をマクロ経済の動きと混同して、大ざっぱに捉えると痛い目にあいますよ。価格と資産価値の違いを見抜く知恵が必要な時代なのです。

山崎氏

 たとえば「少子化で人口が減少して不動産の需要が減るから価格が長期的に下がる」とか、その裏返しとして「人口増加率の高い街は資産価値の上昇期待が大きい」という議論がよくありますが、統計学的な裏付けはまったくありません。

 今、世界中で都市のスラム人口が激増していますが、スラム街の地価が上昇しているという話を聞いたことがありますか? その一方で、もっとも少子化の進む東京都心の地価は大きく上がっている。つまり、人口論で不動産を語ること自体がナンセンスなんです。

 私は、約2万件のマンションの成約事例を基に重回帰分析という統計学的手法で検証しましたが、人口増加率と賃料には何の相関関係もないことが明らかになっています。賃料収入をベースに不動産価格を評価する収益還元法で分析すれば、価格も人口とは関係ないことになるわけです。

--では、どういう視点で見ればよいのでしょうか。

山崎氏 街全体の人口が減っていても高額所得者が相対的に増えていれば不動産価格は下がらないでしょう。エリート層が求める職住近接という街のポテンシャリティがあって、そこに住める経済力のある人々が集まってはじめて、不動産価格が上がる。逆に、街と人の経済力がない地域にいくら人口が増えても、不動産価格は下がります。

「新線開通、新駅の開業で将来性が高まり、地価が上がる」というのも単純な人口論と同じように幻想です。もともと衰退が運命づけられた街に新線が開通しても資産価値は上がりません。
「マンション選びは街選び」だということを、まず頭に叩き込んでください。

立地の前に「街」を選べ

--よく「マンションは立地を買え」と言われますね。

山崎氏 一般的に「立地」といえば、その不動産があるミクロなポジションをいいますね。都心部のオフィス街からの距離圏や最寄り駅からの所要時間などの交通アクセスの善し悪し、生活利便施設の充実度や緑の有無などの住環境を指します。もちろん物件選びの前に立地を検討することは大切ですが、それだけでは不十分です。

 今の住環境が将来に渡ってずっと担保されるかどうか、住宅ローンの返済が終わる30年後まで繁栄し続けるかどうかが重要です。それを判断するには、不動産マーケットの動きに加えて、産業発達史、地理、ライフスタイルの変化などを含めて、街自体を総合的に見る必要があります。

「都市は文明の記憶装置」という言葉があるのをご存じですか? 街選びとは、そこに重層的に積み重なって蓄積された都市文明を選択することに他ならないのです。物件選びの前に立地選び、立地選びの前に街選び、この順番を間違えないようにしてください。

--短期的な価格相場を追跡するだけでは、将来性はわからないということですね。

山崎氏

山崎氏 歴史的な文脈を超長期的に追っかけてみると、街の盛衰がわかってきます。たとえば、住んでみたい街のランキングで常にトップに立つ吉祥寺があるJR中央線沿線は、なぜ住宅地として人気が高いのか。井の頭公園などの緑が豊かで商業施設が充実していて暮らしやすい、というだけでは価値を測れません。

 あまり不動産の専門家は語らないことですが、中央線沿線は、第二次世界大戦前に中島飛行機という世界有数の航空機メーカーを中心とする軍需産業が栄えていました。中島飛行機は今の富士重工業や日産自動車につながる歴史があり、杉並区荻窪、武蔵野市、三鷹市などに工場や研究所を構えていた。当時のエリート層である軍人や技術者、ホワイトカラーに加えて、作家も多数住んでいたし、下請け工場などの関連メーカーも集積し、重層的な都市文化を築いていました。今でも中央線沿線の良い場所は高級軍人の子孫が所有していることも少なくないのです。

不動産価格も“ビッグマック指数”で見ろ!

--街の系譜をたどるとポテンシャリティもわかるということですが、歴史的に成熟した街を選べば間違いないといえますか。

山崎氏 将来に渡ってずっと有望とは必ずしもいえません。というのも、産業構造の大きな変化が起きているからです。
 金融や経済のグローバル化やIT化が進み、工場の海外移転による国内の空洞化が指摘されていますね。国内で生き残れるのは、付加価値の高いハイテク工場や研究開発部門だけともいわれている。工場で働いていたブルーカラーや管理部門のホワイトカラーは苦境に立たされ、中流層が消滅して、勝ち組と負け組の両極端に分かれてきます。

 こういった流れは当然、不動産価格にも影響してきます。工場用地や労働力は世界中で一番安いところを目指して最適化が進む。原料調達から工場生産を経て搬送に至るまでのネットワークを展開するサプライチェーン・マネジメントが進化すると、世界中で土地が統合されるといってもいいかもしれません。不動産の価格が決まるまでのパラダイムが変わったのです。
 つまり、不動産価格がマクドナルド化しているということですね。

--ハンバーガーのマクドナルドですか。マックと土地がどう関係するのでしょうか。

山崎氏

山崎氏 購買力や為替相場の違いを加味した経済力の指標として使われている「ビッグマック指数」ってあるでしょう。全世界で同一品質の商品として売られているマクドナルドの商品、ビッグマックの値段を基準に比べる。あれと同じ考え方を、不動産にも適用するべき時代になってきたということです。

 不動産の分野でビッグマック指数に当たるのが「収益還元価格」ですね。【収益還元価格=月額賃料(純収益)×12カ月÷期待収益率】という式で計算できます。期待収益率は「キャップレート」ともいわれます。

 収益還元法で考えると、「賃料の生まれない不動産に価値はない」あるいは「賃料相場の脆弱な街にある不動産の資産価値は低い」ということになります。今後、かろうじて生き残る街は人間の頭脳が集約できる都市だけ。つまり、賃料の高いところになるでしょう。

(つづく。次回は具体的なエリアの話に斬り込みます)

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