


「住宅ローン控除」は、マイホームを買ったときのローン残高に応じて、一定割合の所得税が戻ってくる特例です(詳しい内容は「マイホームの税金・基礎編。買うとき何がかかる? その2」をご覧ください)。
たとえば、控除期間10年のタイプでは、ローン残高のうち2000万円までの部分について、当初6年間は1%の所得税が控除されます。年末時点で残債が2000万円以上あれば年間20万円です(2008年に入居した場合)。
ただし、控除されるのは実際に支払っている所得税額が限度となります。たとえ最大20万円の控除枠があっても、年間の所得税が15万円なら、戻ってくるのは15万円まで。残り5万円は控除しきれない未消化分になってしまうわけです。逆に、年間の所得税が20万円を超えていても、控除されるのは限度額の20万円までとなります。
これに対して夫婦共働きで妻も所得税を支払っているなら、共有名義にすることで住宅ローン控除をダブルで使うことができるのです。
夫の年収が500万円、妻が同300万円のDINKS(共働きで子どもなし)の例で考えてみましょう。3000万円のマンションを購入するのに、2400万円の住宅ローンを組んだとします(図1参照)。

まず、夫の単独名義でローンを借りて、所有権の登記も単独にした場合。夫は年間で約14万円の所得税を支払っています(配偶者控除も扶養控除もなし)。ローン残高からすると、制度上の控除限度額は20万円ですが、実際に控除されるのは14万1400円まで。6万円分は控除しきれないで無駄になります。
一方、妻とローンを共同で負担し、それに応じた共有名義にすれば、さらにプラスアルファの所得税が戻ってきます。妻の所得税は約5万5200円。夫婦合わせて約19万7000円の控除を受けられることになります。夫単独の場合に比べると、10年間で数十万円の違いになるでしょう。
夫婦共有名義にするには、所有権の登記に当たって注意が必要です。
「夫婦平等だから、半分ずつにすればいいのでは?」
「収入が夫と妻で5対3なので、登記も5対3の割合にすればいい」
これは両方とも間違いです。実際に出資した金額を厳密に計算して登記をしなければなりません。
図1と同じ条件で解説しましょう(図2参照)。まず、購入した価格を頭金とローンに分けます。頭金は600万円、ローンは2400万円です。それぞれについて夫婦の出資金額を出して、合計したのが全体の出資割合となります。
頭金は、おのおの自分の貯金などから出した現金の額。このケースでは300万円ずつ出したことになっています。

次にローンについては、頭金ほど単純ではありません。夫婦の収入割合に応じて2400万円を按分するのです。夫と妻の収入割合は5対3なので、夫は[2400万円×5/8=1500万円]、妻は[2400万円×3/8=900万円]。
そして頭金の分とローンの分を合計すると、夫が1800万円、妻が1200万円となり、全体を3対2の割合で持ち分登記すれば良いことになります。
もしも、頭金を妻が全額出したという場合は、夫の出資が合計1500万円、妻も1500万円(600万円+900万円)。つまり、持ち分登記の割合は2分の1ずつになるわけです。
ちなみに、出資割合に応じて正しく持ち分が登記されていない場合、持ち分に対して実際の出資が少ない人に対して、贈与税がかかる可能性があります。たとえば図2の例で、持ち分を半分ずつにしている場合、夫から妻へ300万円の贈与があったものと見なされて課税されるケースがあるということです。
夫婦共働きで住宅ローン控除をダブルで受けるには、ローン契約の名義も問題になってきます。
実際には妻の収入を当てにしているのに、夫の単独名義でローンを借りているケースはよくあります。この場合、妻が連帯保証人になっていたとしても、妻のほうで住宅ローン控除を利用することはできません。
これに対して、夫婦それぞれが独自にローンを借りている場合なら、ローン契約も別になるので、それぞれが住宅ローン控除を受けることが可能です。
また、契約は1本になっている場合でも、夫婦が連帯債務者になっていれば、夫婦2人で住宅ローン控除を受けられます。
このように住宅ローン控除を最大限活用できるかどうかは、ローン契約の仕方によっても左右されますので、資金計画を立てる早い段階から十分に検討する必要があるでしょう。
なお、共働きで夫婦共有名義にして住宅ローン控除を2人分利用していた場合でも、妻に子どもが生まれて育児のために仕事を辞めてしまうと、所得税を支払わなくなるため、その時点で妻の分の控除は打ち切られます。
さらに、ローン返済は夫の収入だけで続けることになるわけですが、妻の返済分については夫から妻への贈与となり、贈与税がかかる可能性もあります。
たとえば図2の例では、年間返済額が約126万円なので、夫婦の収入割合で分けると夫が約79万円、妻が約47万円の返済義務を負います。妻が仕事を辞めて収入がなくなると、夫から妻へ47万円の贈与が発生するわけです。
もっとも、贈与税の基礎控除110万円の範囲内ですから、実際に贈与税が課税されることはないかもしれません。金額が大きい場合には、夫婦間の貸し借りの形を取る方法も考えられます。
ケースバイケースで具体的な対策は異なってきます。夫婦関係や将来設計によっては、共有名義にしないほうがよい可能性もありますので、じっくり話し合ったうえで実行してください。
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