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マイホームの税金・基礎編。売るとき何がかかる? その2
前回に続いて、マイホームを売るときに関係する税金編です。今回は「買い換え特例」についてのバリエーションと、自宅が値下がりして買ったときより安い金額でしか売れなかった場合の「譲渡損失の損益通算と繰延控除の特例」について解説しましょう。
【十文字良二】十文字会計鑑定事務所、税理士・不動産鑑定士
情報提供日/2008年6月25日
売却代金より安い住まいを買ったときの『買い換え特例』は?

 前回の最後に、マイホームの買い換え特例について説明しました。売却益が出ても、売った金額より高い住宅に買い換えると、譲渡税の課税が繰り延べられるという優遇税制です。

 では、売った金額より安い住宅に買い換えた場合はどうなるのでしょうか。実際、子どもが独立して空いた部屋の目立つ郊外の一戸建てを売って、都心に近い小規模なマンションに買い換えるといったケースは珍しくありません。いわゆる“縮小買い換え”というパターンです。売却益を全額買い換え資金に充てないで、手元に現金を残しておきたいという意向もあるでしょう。

図1.買い換え特例/売却価格より買い換え先が安い場合

 縮小買い換えの場合でも特例は使えます。ただし、売却益全部が課税の繰り延べの対象になるわけではありません。図1をご覧ください。
 自宅の売却金額が5000万円、買い換え先の購入金額が3500万円だったとしましょう。自宅を買ったときの取得費が1000万円だとすると売却益は4000万円です。このうち、売却金額と買い換え金額との差額である1500万円は「収入金額」とされ、この部分から必要経費を差し引いた譲渡所得に対して譲渡税がかかります。課税繰り延べの対象になるのは、売却益と収入金額との差額である2500万円。

 買い換え特例を使った場合の譲渡所得には、3000万円特別控除や長期譲渡所得の軽減税率の特例は利用できません。図1の例でいえば、1200万円に対して長期譲渡所得の税率20%がかかり、税額は240万円となります。

 ちなみに、買い換え特例を使わずに、3000万円特別控除と長期譲渡所得の軽減税率の特例を使った場合のほうが税額は安くなります(課税譲渡所得=売却益4000万円−3000万円特別控除=1000万円→軽減税率14%→譲渡税140万円)。したがって、売却益が大きくなければ買い換え特例のメリットは少なくなるといえるでしょう。
 他の特例を使った場合との損得を比較して、慎重に選ぶことをお勧めします。

自宅値下がりの赤字分をリカバリーできる繰越控除の特例とは?

 次は売却損が出てしまった場合です。ここ数年、都市部では住宅価格が上昇しているとはいえ、バブルの頃に購入した物件のなかには、まだまだ買ったときより安い金額でしか売れないケースが珍しくありません。

 そんな売却損(赤字/譲渡損失)を少しでもカバーできるのが「譲渡損失の損益通算と繰延控除の特例」です。これは、マイホームを売却して発生したマイナスの譲渡所得を、給与所得などのその他の所得から差し引いて所得税を計算することができ、なおかつ最初の年に控除しきれずに残った譲渡損失を翌年から3年間まで繰越控除ができるという制度です。マイナスとプラスの所得を足し合わせることを「損益通算」といいます。

 この特例には、マイホームを買い換えた場合と、売却のみの場合の2タイプがあり、繰越控除できる限度額が違います。
 仮に、4500万円で買った自宅が2000万円に値下がりしてしまったとしましょう。その差額が2500円の赤字です(図2参照)。その他の所得は給与所得で700万円とします。

図2.譲渡損失の損益通算と繰越控除のしくみ その1.マイホーム買い換えの場合

 まず、買い換えタイプでは、赤字の2500万円をすべて損益通算と繰越控除に使えます。譲渡した年は、損益通算すると課税所得はマイナス1800万円となり、所得税はかかりません。翌年の住民税もなくなります。給与所得者の場合、源泉徴収されていた税金が還付される形です。
 さらに、控除しきれない赤字が1800万円残ります。これを翌年以降に繰り越して控除することができるのです。この例では2年目までは課税所得がゼロ。3年目は少し課税所得が発生しますが、各種の所得控除などを考慮するとほとんどかからないのではないでしょうか。

 次に、買い換えなしの売り切りタイプの場合です。こちらは2500万円の赤字の全額を損益通算と繰越控除に充てることはできません。しかも、売却する自宅のほうに住宅ローンが残っていることが条件となります(買い換えタイプでは、売却する自宅については住宅ローンの有無は問わない)。

図3.譲渡損失の損益通算と繰越控除のしくみ その2.マイホーム売却のみの場合

 控除の限度額は住宅ローン残高と売却金額との差額まで(図3参照)。売却する時点で住宅ローンの残高が3000万円だったとすると、1000万円となります。同様に給与所得が700万円なら、最初の年は課税所得がマイナス300万円で税金はかかりません。しかし、2年目から早くも課税所得が発生します。
 買い換えタイプに比べると、繰越控除の効果は小さいといえるでしょう。

「譲渡損失の損益通算と繰延控除の特例」の条件は?

 最後に「譲渡損失の損益通算と繰延控除の特例」の適用条件について触れておきましょう。図4は、買い換えタイプの条件です。
 売却する住宅、買い換え先の住宅、それぞれに条件があります。売却するほうは、土地と建物の所有期間がともに5年を超えていることがポイント。買い換え先のほうは、床面積が50m²以上の住宅で、返済期間が10年以上の住宅ローンを利用することが必要です。また合計所得が3000万円を超えた年は、繰越控除ができません。退職金が出て一時所得が急に増えた場合などは注意が必要です。

図4.「譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例」の適用条件(マイホームの買い換えの場合)

 なお、「3000万円特別控除」「長期譲渡所得の軽減税率の特例」、その他の買い換え特例などのマイホームに係わる優遇税制との併用はできないのが原則。ただし、買い換え先に「住宅ローン控除」を利用することは可能です。

 買い換えなしの売り切りタイプの場合、図4の売却する住宅の中に「返済期間10年以上の住宅ローンの残債があること」という条件が加わります。ここでいう返済期間は、当初の設定期間で、売却時点の残存返済期間が10年を切っていても構いません。

 住まいを売却する際には、何か活用できる特例はないか、どの特例を使うのがベストかをよく考えて資金計画を立てるようにしましょう。



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