


「小規模宅地の評価減の特例」は、亡くなって財産を残した被相続人や、その人と生計を一にしていた親族などが住んでいたり、事業を営んだりしていた土地の評価額について大幅な評価減を受けられるものです。

特例が設けられた趣旨は、多額の相続税を支払うために、自宅や自営店舗などの生活基盤にしていた敷地まで手放さないでも済むようにすること。住み続けたり商売を引き継いだりできることが目的ですから、少なくとも相続税の申告期限までは、相続した人が売却せずに所有していることが条件となります。
また、生計の維持に最低限必要な範囲に限られることから、減額対象になる敷地には「限度面積」が設定されています。
相続した人の条件によって、一定面積まで80%か50%の減額が受けられます。80%の減額ということは、評価額が5分の1に圧縮されるということ。たとえば、1億円の土地だったら2000万円になります。この特例が適用されるか否かによって、莫大な相続税がかかったり、まったくかからなかったりすることもあるのです。
なお、ここではマイホームの相続を中心に考えていきます(評価減の割合と適用面積などについては税務講座2007年8月29日アップの「評価額ってなに? その3」の路線価編もご覧ください)。
特例を受けられる条件は図1の通り。たとえば、父が亡くなり、一緒に住んで生活していた母や子どもたちなどの親族が相続する宅地が対象になります。被相続人の父親が単身赴任している場合や、病院・高齢者施設などに入っている間に亡くなっても、生活の拠点にしていた家に母や子どもが住んでいれば適用対象です。
評価減の割合が80%になるか、50%になるかは、相続する人の条件によって変わってきます。
まず、配偶者が相続する場合は、ほぼ無条件で80%の減額を受けられます。
これに対して子どもなどの親族が相続する場合には、一定の条件があります。被相続人と同居していたかどうかが最大のポイント。かつ、相続後に引き続き住み続ける場合は80%減額が適用されます。
同居していない場合でも、次の2つのケースでは80%減額になります。
1つは、相続開始前3年以内に、賃貸住宅や社宅など自己所有(または配偶者所有)の持ち家に住んでいないケース。ただし、相続直前において、その建物に被相続人の配偶者や法定相続人に該当する親族が同居していなかった場合に限ります。
2つ目は、被相続人と生計を一にしている場合です。ただ、こちらは生計を一にしていることをきちんと証明できないと税務署に認めてもらえないおそれがありますので、注意が必要です。また、建物の所有者が誰か、土地や建物の賃貸借が有償か無償か、などによっても減額割合の判定が変わってきます。

相続人が複数いる場合、誰が小規模宅地の特例を選択するかによって、80%減額か50%減額かが分かれてきます。
たとえば既に父親が亡くなり、自宅を相続していた母親の二次相続が始まったケース(図2参照)。長男は別居、長女は母親と同居していました。ここで長女が相続すると80%の減額、長男が相続した場合は50%減額となります。
仮に、同居している長女がいなかったら、長男は別居している場合でも、相続前の3年間が借家住まいであったなら80%減額が受けられます。
また、相続時精算課税制度を利用して生前贈与していた土地については、小規模宅地の評価減の特例は使えません。相続または遺贈によって取得した場合に限られるからです。
このように、居住形態や所有関係が微妙に関係してきます。まだ相続までに余裕があるうちに、将来の変化を展望しながら、家族でどのような住まい方をするかを考えておくことが大切といえるでしょう。
小規模宅地の評価減の特例を利用するには、相続税の申告書に特例を受けること、及び計算の明細を記載し、必要書類を添付して申告する必要があります。納付する税額がゼロでも申告は必要です。計算の明細をつけて申告するには、それまでに遺産分割が行われていなければなりません。未分割の土地には適用されないわけです。

ただ、原則として相続税の申告期限から3年以内に分割が完了すれば、計算をしなおして特例を事後的に適用することは可能です。税額が下がる場合は「更正の請求」をして税金の還付を受け、税額が増える場合は「修正申告」をして不足分を支払います。
とはいえ、相続税は、申告期限までに金銭で一括納付するのが原則ですから、いったん税金を支払うか、延納の手続きが必要です。延納には、延納利子税の負担があります。ですから、申告前に遺産分割協議を完了し、小規模宅地の評価減の特例をきちんと利用できる形で申告をすることが望ましいでしょう。
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