
「取引の長いメインバンクだから、有利な条件で融資してくれるよね。えっ? 融資できない? ど、どうして???」 昨年末、40歳になったのを機に、早期退職制度で勤務先を辞めた塚本さん。今年2月、中古マンションを購入しようとしたのですが、銀行に融資を断られてしまいました。
「会社員時代から給与振込口座を置いていたつきあいの長い銀行で、退職金も全額その銀行に預けているんです。まさか断られるなんて・・・」。
その中古マンションを現金で買えるだけの貯金もあるというのに、なぜ、メインバンクから住宅ローンが借りられなかったのでしょうか。


退職後はこれまでの仕事の経験を活かした事業を始めようと準備中の塚本さん。13年前に購入した3LDKのマンションは、関西への転勤中に賃貸に出し、今も居住者がいるため、首都圏に戻ってきたものの家族で賃貸マンションに住んでいます。
「家賃を払うのももったいないし、もう一軒購入しようかと実は退職前から思ってたんです。そうしたら今年に入って所有物件の真上の住戸が売りに出た。不動産会社にすぐに購入の意思を伝え、銀行に融資の申し込みをしたのですが、結果はバツ」。

所有しているマンションのローンは返済ずみ。ローンの申込先は、借入希望額よりも多い預金を預けてあるメインバンク。考えていた資金計画での毎月返済額も現在の家賃よりも少なく、無理のないものだった。融資審査はすんなり通るものと思っていただけに、断られたときは驚いたそうです。
「理由は会社を辞め、開業してまだ間もないということ。その銀行の『個人事業主の場合、同一事業を2年以上継続』という条件に合わなかったんです。預金はあっても、それは事業資金にまわる可能性もあり、余裕資金というわけではありませんしね」
その後、塚本さんは都市銀行3行、地方銀行1行、信用金庫1庫、外資系銀行2行をまわり融資を打診。しかし、どの金融機関も「事業の継続期間」の条件に満たないことで、融資限度額の算出すらしない、つまり、門前払いの状態だったそう。
「外資系の銀行が『ほんとうは2年以上の事業継続が条件ですが、確定申告1回分の書類があれば審査をしてみます』という柔軟な反応でした。でも、まだ事業を開始してないわけですから、それも無理なんですよ」と塚本さん。

唯一、大手信託銀行から「開業のための事業資金としてなら融資します」という提案をされたそうですが、金利3.5%、返済期間最長15年で、住宅ローンよりも返済額が多くなってしまう条件でした。
「返済できない金額ではないのですが、もともと開業にはそれほど資金がかからない仕事なんです」という塚本さん。今後の生活や開業のことを考えて、できるだけ手持ち資金を残しておこうと住宅ローンの利用を考えていたのですが、結局、家賃を払い続けるのも、高めの利息を払うのもどちらももったいないと感じ、購入を検討した物件を現金で購入しました。
・購入後、独立開業や転職の予定があるなら、収入がダウンしても返済できる範囲で借入額を決めるべし

融資の際、金融機関が審査するのは年収に関してはその金額だけではありません。住宅ローンは長期にわたって返済が続くものですから、安定した収入が長く続く人なのかどうかも審査のポイントです。つまり、安定収入の証明ができなければ融資を受けられない可能性が高いわけです。
だからといって、会社を辞めたら借りられなくなるからと、退職後の収入のあてもないのに、在職中にローンを申し込むのは危険です。
早期退職や独立開業、転職の予定がある場合は、その後も安定した収入が得られるかどうか冷静に考えたうえで、借り入れのタイミングを決めたいものです。
塚本さんは、
「預金がゼロになったわけではありませんが、かなり減りましたから不安はあります。こんなことなら、購入を考え始めた会社員時代に買ってしまえばよかったですね。でも、手もとの資金に余裕がなくなった分、これから始める事業を成功させようというファイトはわきます」
と失敗をバネに、入居後、開業準備を本格始動することにしています。
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